身近な草花や樹木、動物や道具を、誰もが望む普遍的な願いを込めてアイコン化した家紋は、円と線のみでかたちの本質を表現したアートともいえます。山内武志さんは「型染め」という手法を用いて、今を生きる私たちが気負わず、そして純粋に、その美を日常のものとして愉しめる一枚に仕上げています。

家紋の型染めは、2004年に開催がはじまった「浜名湖花博」で、園芸家の柳宗民氏（柳宗悦の三男）が記念講演された際に植物をテーマとした装飾として、植物模様の家紋の垂れ幕制作を担当したのがきっかけなのだそう。山内武志さんにとって思い入れの深い仕事といえます。

型染めの風呂敷 「鹿角に楓」（かづのにかえで）
鹿は古来より神の使いとして大切にされていることから、吉祥紋として戦国武将たちが兜の前立てに用られたそうです。お守りになりそうな神秘的な雰囲気は、タペストリーのように飾ってもよさそうです。

しっかりとした厚手の布に染められており、風呂敷としてはもちろんテーブルクロスでも、ベッドやソファにさっと掛けても、タペストリーとして飾ってもよいかもしれませんね。
90サイズは、持ち歩きにもちょうどよいサイズ。三角に折っててっぺんを結び、肩掛けにするだけでバッグに早変わりします。エコバッグ代わりに持ち歩いても素敵です。いろいろ使える型染めの風呂敷は、一つあるととても便利です。厚手の布に染めたためか、少し滲みが見られる箇所もありますが、これも手しごとの味わいとしてお楽しみください。

人間国宝の 故芹沢けい介（せりざわけいすけ）氏に師事し型染めを学んだ山内武志さん。山内さんが生み出した型紙は、手ぬぐいだけでも100種類以上といいます。なかでも風呂敷や多用布は、堂々とした色使い、モダンで華のある大胆な図案、大小の線づかいの調子など、どれも素晴らしいものばかり。
伝統柄からオリジナルの抽象柄までその生命力あふれる作品に魅入られ収集するファンが多いというのも頷けます。華やかでありながら決して俗っぽくならず、品格があり使い込むほどに愛着の湧く逸品です。

参考文献： 「日本の家紋大事典（森本勇矢 日本家紋研究会）」「決定版 由来・起源がよくわかる! 家紋と名字（網本光悦 西東者）」「日本の家紋 （青幻舎第二編集室 青幻舎ビジュアル文庫シリーズ）」及び 家紋のいろは 日本の家紋に関する情報サイト